高校を卒業してから、いろいろな事情があって隣町に行くことが多くなった。
この町には知り合いがいなかったので基本的に1人で行動することが多かった。
そんな時にばったりと同じ高校の同級生に会った。
彼女は聡美という小柄な子で、学生の時にほとんど節点はなかったけど、まあまあかわいい子だったので記憶の片隅には残っていた。
向こうも俺のことなんて憶えていないだろうと思っていたのだが、しっかり憶えているらしくとても親しみ深く話しかけてきた。
聡美は2つ年上の男と付き合っていたが、つい最近別れてこの町で働きながら一人暮らしをしているらしい。
ねえ、せっかく出会えたんだから家で一緒に遊ぼうよ
聡美がいきなり誘うもんだから俺は慌てて返す
俺を家になんか入れて良いのかよ。襲っちゃうかも知れないよ?w
聡美は笑って言った。
健一って憶えてる?あいつもこの町で働いててさ、今でもたまに遊んだりしてるんだ。今日は健一も誘うから3人だったら襲われないでしょ?(笑)
健一は俺もよく知っていた。
高校で一緒に悪さしていた悪友だ。
気は小さい方で喧嘩とかする奴じゃなかったけど、仲間思いの良い奴だった。
へー、健一はこの町にいたんだ。最近会って無くて知らなかった。久しぶりに会ってみたいな
俺がそう言うと聡美はにっこり笑って言った。
じゃあ、決まりね!今晩は思いっきりたのしもー
この日の夜は俺と健一と聡美の3人で朝まで遊んだ。めちゃくちゃ楽しかった。
この日を境に俺たち3人はちょくちょく集まって遊ぶようになった。
聡美はいつも元気が良くて、とても明るくて俺はいつの間にか聡美を好きになっていた。
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そんな時にある疑問が頭をよぎった。
健一は聡美のことどう思っているんだろう?
俺は健一を呼び出すと自分の本音をぶつけてみることにした。
俺さ、聡美のこと好きなったみたいなんだわ
俺がそう言うと健一は下を見ながら言った。
なんとなく解ってたよ。でもお前の気持ちを聞いたからには俺も正直に言わなければならないことがあるんだ
俺は嫌な予感がしたけど健一に話の続きを促した。
俺この間・・・聡美と寝た
健一の口から出たのは俺にとって衝撃的な一言だった。
健一の話だと俺がいない時に聡美の年上の元彼が急に家に押しかけてきて、聡美に暴力を振るったそうだ。健一はちょうど遠くからその現場をみつけたんだけど、聡美の元彼がやばそうな奴だったんでびびって助けに行けなかったらしい。
しばらくして元彼はその場を立ち去ったので、健一は聡美の元に行って彼女を慰めた。
もともと聡美が元彼と別れた原因もDVだったらしく、聡美は凄く怯えていたので健一は一晩中聡美の側にいた。
そしてその夜に二人は男女の仲になった。
しかし、行為の後、聡美は今日のことは無かったことにしてくれと言い出したので二人は付き合っているわけではないらしい。
だけど俺の中では勝手に聡美の心の中を知った気になっていた。
今でも元彼につきまとわれている聡美は次の恋愛に踏み出せないでいるのだと。
つまり、元彼をなんとかすれば聡美は自由になれるはず。
それから俺は時間が許す限り車で聡美の家の前に張り込むことにした。
今思えばかなり怪しい行動を取っていたと思うが、当時の俺は必死だった。
張り込んでから数日後、聡美の元彼が家の前に現れたので俺は声をかけた。
ちょっと顔かして貰えませんかね?
その後、聡美の元彼と数分運動をした後に腹を割って話すことになった。
聡美の元彼はいまだに聡美のことが忘れられないらしく、よりを戻したくて家に押しかけているとのことだった。だけど、聡美が頑なに拒むのでついカッとなって暴力を振るってしまったそうだ。
どんな理由があるにしろ女に暴力を振るう奴は、俺は絶対許せないから、もしまた聡美に暴力振るったら、俺は何度でもお前を殴りに来るからな!
俺がそう言うと元彼は二度と聡美に暴力を振るわないと約束してくれた。
翌日、俺は健一を呼び出して元彼とケジメをつけたので聡美を幸せにしてやってくれと話した。
そして聡美には彼女が出来たからこれからは会えなくなると嘘をついて別れを告げた。
こうして俺の恋は終わった。
まあ、片想いだが。
それから一ヶ月後、地元でばったりと健一に出会った。
久しぶりだな!聡美とはうまくいってるか?
健一はとてもばつが悪い顔をしながら聡美とのその後のいきさつを話した。
結論から言うと、聡美は元彼の元に戻ったらしい。
元彼は聡美のところに現れて二度と暴力を振るわないからやりなおしてくれてと頭を下げたのだそうだ。
聡美はその一言で速攻元彼の元に戻ったらしい。
聡美は元彼のことがずっと好きだったのだ。
ただ彼のDVにたえられなかっただけなのだ。
俺も健一も聡美の寂しさを癒やすだけの存在だったのかも知れない。
まったく女心は解らない
なんにせよ、俺も健一も聡美に恋をしたのは事実なんだし
ま、いっかと俺は思った。
健一、久しぶりに今晩飲まないか?
俺がそう言うと健一は申し訳なさそうな顔をして言った。
まだ、俺のこと友達だって思ってくれるのか?
俺は健一の背中をパンッと叩くと言った。
何言ってんだよ。あたりまえだろ!久しぶりに仲間集めて大宴会しようぜw
こうして俺の手の平から恋愛の花びらは飛んでいってしまったが、友情の炎は消えずにしっかりと残った。
これはむかし、むかしに実際にあった
素敵な片想い・・・・・素敵じゃないな