AzuYahi日記

どうでもいい知識、思いつき、妄想などなど

【その4】測量業なんてやるもんじゃない!

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こんにちは!AzuYahiです。

 

前回の続きです。

 

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8月なのに・・・

 

山頂で観測が終わるまで僕たちはゆっくり待機していたわけですが、メンバーの一人が何かに気づいたように言いました。

 

なんか気温下がってないか?

 

言われてみればかなり肌寒くなってきました。

 

今までずっと歩いていたので気温の変化に気づきませんでしたがかなり寒いです。汗で衣服が濡れているので尚更です。

僕は携帯している棒状水銀(温度計)で気温を確認します。

 

気温は13度しかありません

 

今日は確か30度を超える気温になるはずでした。

 

だから熱中症対策で薄着の装備で全身を固めているので尚更寒いです。

ってか、今は8月だよな・・・。

 

僕たちは山の天候を甘く見ていたことに後悔しました。

 

そんな僕たちをあざ笑うかのように自然は情け容赦ない攻撃をしかけてきます。

 

どす黒い雲が空を覆い、雷が激しく鳴り始めました。そして空からはバラバラと何かが降ってきます。

 

雪?

 

いや、雹(ひょう)でした。

 

温度計を確認すると6度まで気温が下がっています。

 

山頂で風も強いためいっそう寒さが身にしみます。

 

僕たちの全身は自分の体ではないようにガタガタと震えはじめました。

 

これはやばい!

 

突然の自然の猛威により僕たちは冷静さを失い頭がうまく働きません。

山の事故で毎年たくさんの人が亡くなるのも納得できました。

 

人間の想像を遙かに超える自然の猛威。

 

こうなってしまってはどうしようもありません。

 

 

そんな中、冷静だったのはハンターの二人でした。

 

しんがりをつとめていた無口なハンターは持参したゴミ袋を全身にすっぽり被り、そのままじっと座っていました。なるほど、これなら寒さをしのげます。

 

そして前衛のハンターは僕たちの方に駆け寄ってきました。

 

枯れ木を拾い集めるんだ。湿ってしまったら使い物にならないから急いで!

 

山頂なので枯れ木なんてあまり落ちていませんでしたが僕らは言われるままに必死で集めました。

ある程度の枯れ木が集まると僕たちは雹や風がなるべく当たらないように円になって枯れ木を囲みました。

そしてハンターは持っていた火付けを枯れ木の隙間に入れるとライターで火をつけました。

すると簡易的な焚き火が完成しました。

火力も意外に強く、そう簡単には消えないくらい燃えました。

 

焚き火ってこんなに暖かいものなのか・・・。

 

僕たちの冷えきった体はこの小さい炎にかなり暖められました。

一段落する前にハンターの人は言いました。

 

枯れ木の量が少ないからこのままでは火が消えてしまう。そこに立っている木製のポールを燃やしても良いかな?

 

班長はうなずくと、刺さっていたポールを引き抜いてハンターに渡しました。

 

ハンターは携帯していた鉈を使ってポールを削りながら焚き火にくべていきます。

ポール1本ですがかなりの量の燃料資材となりました。

 

焚き火を囲みながら待機してようやく最初の観測の時間が終了しました。

 

僕たちは点検のための観測の準備をして、無事に観測を開始します。

 

悪天候なのでぎりぎりですが60分で観測を終了する計画にしました。

 

このころ降り続いた雹はやみましたが、寒さは相変わらず厳しい状態です。

 

僕たちは再び、焚き火の周りを円になって囲みます。

しんがりのハンターはゴミ袋を被ったまま微動だにしていませんでした。

 

前衛のハンターの話だとあの防寒方法を慣れない人がやると、とても耐えられないものなので僕たちにはお勧めしないとのことでした。

確かに長時間あのままってのはつらいかもしれない・・・。

 

そんな中、前衛のハンターは僕たちにある提案をしてきます。

 

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もうすぐ木製ポールが無くなるので燃やす物がなくなる。なので最後の手段としてハイマツを伐採して燃やそうと思う。生木なので大量の煙が出て目がもの凄く痛くなるかもしれないが凍えるよりましなので実行しても良いか?

 

僕たちは目の前の焚き火が消えるなんて考えたくも無かったので皆がそれを承知しました。

 

ハンターは一人で山頂を少し下ると、両脇にたくさんのハイマツの枝を持ってきた。

一度にくべると木が湿っていて焚き火が消えてしまうので、少しずつハイマツの枝を焚き火にくべていく。すると警告されたとおりもの凄い煙が焚き火から吹き出し僕たちの目に激痛が走りました。

例えるなら玉ねぎで目がしみる痛さを強くした感じで、涙が溢れてきてまともに目が開けなくなりました。

 

それでも寒さをしのぐために焚き火には当たらなければならないので皆は涙を流しながら焚き火を囲みました。

 

そして60分後。

 

無事に観測を終了してやっと下山できることになりました。

皆の目は充血していて真っ赤でした。

 

僕たちは測量機器を収納すると山火事になると大変なので焚き火を完全に消化しました。

帰りは下りなので登ってきた時間の半分くらいでふもとまで降りられる計画でした。

とはいえ、夜になってしまうとそれこそ一大事なので急いで下山しなくてはなりません。

 

僕たちは再びハイマツの上を歩行しながら少しずつ下山していきます。

登りの時より歩きづらい印象を持ちました。

 

それでも順調に進んでいたのですがここでアクシデントが起こります。

 

うわっ

 

後ろの方で悲鳴が聞こえたので僕が振り返ると班長がハイマツの隙間に片足を落としてしまいました。顔は苦痛にゆがんでいます。

 

僕たちは協力して班長を引っ張り出し、あと少しでハイマツ地帯を抜ける場所だったのでそのままハイマツ地帯を脱出しました。

 

班長を腰の下ろせそうな場所に連れていって座らせました。

どうやら今のアクシデントで班長は股関節を痛めてしまったらしく、まともに歩くことができないようでした。

 

班長は顔を苦痛にゆがませながら僕たちにいました。

 

俺は皆のペースで下山できそうも無いからここに置いていってくれ。俺に付き合っていたら夜になってしまって皆が危険になる。

 

これを聞いた僕はなんだか腹がたって班長に怒鳴りつけました。

 

そんなんで俺たちだけ助かっても目覚めが悪くて仕方が無い!歩けないなら俺が最後まで担いで降りるから一緒に行きますよ。

 

それを聞いた他のメンバーも僕の意見に同意してくれました。

 

こうして僕たちは二人がかりで班長に肩を貸しながら下山しました。

交代で班長を担いだのでそれほど疲れることも無く、夕方には無事にふもとまで下山できました。

町に戻るととても暑く、気温は28度でした。

あの震えるような寒さはどこに行ってしまったのやら・・・。

 

 

結果、命がけとなってしまった今回の作業によって山中に高精度な位置情報が備え付けられることになり、それをもとに工事が進められ、約10年後に無事にダムが完成しました。

僕はこの完成されたダムを見る度に、その時の事をいまだに鮮明に思い出すのです。

 

 

ところで、前回たくさんいただいたコメントの中でmomotoyuinさんよりこんな内容のコメントがありました。

 

 

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それでも仕事を続ける愛の部分を知りたい

 

 

 

 

それは、ありきたりな理由かも知れませんが、

 

 

困難な仕事を皆で攻略する一体感とそれを終えた時の達成感です。

 

これって一度味わうと少し癖になるんですよねw

僕が20年くらいこの仕事を続けている理由はこれしか思い浮かびません。

 

 

それ以外は給料は安いし、休みもないし、危険が多い、残業も多いだとか嫌なことばかりなんで、測量業なんてやるもんじゃ無い!っていつも思っちゃう訳ですがw

 

 

というわけで、今回でダムの測量のお話は終わりになります。

 

これまでたくさんのブックマークやコメントをいただいて本当に励みになりました。

仕事が忙しい中、この記事を書き続けられたのは読者の皆さんのおかげです。

 

せめてこの場でお礼を言わせてください、ありがとうございました(*^_^*)

 

それではまたね(^_^)/

 

 

 

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